予想だにしなかったことで起こる指尖部壊死


なついキズとやけどのクリニックを開業してから,テープ固定によって指先が壊死した患者さんが2人いました。

1人は9ヶ月の男児で,絆創膏をきつく巻いてしまったために血流が悪くなり,指先の皮膚が壊死してしまった患者さん。
9ヶ月男児 キズパワーパッドをきつく巻いたことによる指尖部壊死 (新しい創傷治療より)

もう1人は1歳の女児で,ドアに指を挟んでしまい爪が剥がれてきたため近医を受診したところ,
「新しい爪が生えているから大丈夫」といわれ絆創膏で保護をして様子を見ていました。
しかし,自分で何回か剥がしてしまうため,取れないようにしっかりと固定して数日後に剥がしたところ,
指先が壊死してしまったことに気が付いたという患者さんです。

このような壊死は子供に限ったことか言えばそうでなく,大人でも同様なことが起こっています。
67歳女性 輪ゴムでの止血による指尖部壊死(新しい創傷治療より)


なぜこのようなことが起こるか考えると,本人が思っている以上にテープを引っ張り気味に貼っているということ,
又,止血法に対する誤った認識があるためではないかと思います。

自分でテープを貼る時は,グルグルと巻きながら固定する方が多くいますが,強く巻きすぎると痛くなったり,
ビリビリとしびれてきます。その時,大人は自分で異常を察して傷口を確認し固定を仕直しますが,
子供は「きつい」や「痛い」などの表現ができないため家族も気が付かないことが多く,
長時間血流の途絶えた状態になるために壊死してしまうのです。

止血法に関してですが,まず,止血法には大まかに,直接圧迫法(出血した部分を直接圧迫する)と
止血帯法(三角巾やタオルを出血した箇所より心臓に近い部分を三角巾やタオルで結ぶ,30分に一度は緩めて
血流の再開を図る)があります。

圧迫止血をしても止まらない時は,止血帯法を行うように指導されていますが,
実際には,多くの患者さんは患部の周辺を縛って病院を受診されます。
それは縛ることで一時的に出血が止まるので精神的に落ち着くことと,誤った認識のせいではないかと思います。

大きな血管に達しない限りは止血帯法は必要なく,患部に食品用ラップを当て,
その上から清潔なハンカチやタオルなどを載せて患部を圧迫し,心臓より患部を高くする方法で
出血は落ち着いてきますので,むやみに傷口の近くを縛らないほうがいいでしょう。


指尖部の壊死を予防するための3点
・固定テープや包帯などはできるだけ引っ張らずに添わせるように貼る又は巻く。
・必ず1日1回は交換して傷口の状態を確認をする。
・自分で判断できない時は,直ぐに病院に問い合わせて対応を聞く又は医療機関を受診する。

2020-09-08 : その他 : コメント : 0 :

熱傷 受傷当日の痛みの対処法。

熱傷による受傷当日は,湿潤療法を行っても,受傷から6時間程度痛みを伴うことがある。
その時の対処法は,

熱傷 保冷剤”
事前に食品についてくる保冷剤を消毒し,

熱傷 保冷剤””
キッチンペーパーに包んで,冷凍庫に入れて凍らせておく。

~~熱傷患者さんが来院~~

熱傷 保冷剤”””
創面に創傷被覆材(写真はハイドロコロイド包帯)を当てた後,

熱傷 保冷剤””””
包帯やチューブネットを巻き,創面に保冷剤が直接当たらないように保護をして,

熱傷 保冷剤”””””
患部の位置に保冷剤をのせ,ネットなどで押さえ,痛みがなくなるまで当てていただいている。

※長時間にわたり保冷剤が当たることで凍傷にならないよう,
位置を替えたり,時々保冷剤をはずしていただくように説明している。

2020-08-26 : 痛みについて : コメント : 0 :

高齢者医療とは?の視点に立った褥瘡治療

褥瘡学会が設立された頃(1988年頃)に病棟に勤めていた私は,褥瘡の担当を任されました。
褥瘡を作るのは看護師の恥だと言われていた時代,褥瘡をつくってしまったということに責任を感じ,
チームスタッフと一緒に医学書を読んでは手探りで治療していました。
しかし,一向に変化がないまま患者さんが退院されたり,亡くなったりしたため,
褥瘡治療に関しては,改善する,創面が閉じるという実感がないまま治療にあたっていたように思います。

しかし,2003年に夏井先生が相澤病院に赴任して褥瘡の治療がガラッと変わりました。
鳥谷部俊一先生の推奨する「褥瘡のラップ療法」を褥瘡治療に取り入れたのです。
その治療は次元の違うものでした。
それまでは,ほぼ褥瘡と薬剤にしか視点がいっていませんでしたが,
鳥谷部先生の褥瘡治療は高齢者医療とは何か?といった観点に立ったもので,しかも簡潔明瞭な治療でした。

・軟膏はワセリンのみで迷うことなし,しかも褥瘡の創面が観察しやすい。
・おむつ交換の合間に処置が行えるため手間もかからない。
・市販購入できるもので治療材料が作れる,しかも安価。
・病院に入院してから在宅に移行するまで治療が一貫している。
感染の判断を誤らなければ専門家でなくても処置が行えるこの治療は,これからの高齢化社会には必要不可欠であると
その時に感じました。

褥瘡のラップ療法に関しては詳しくは下記をご参照下さい。
顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」


褥瘡ができるのは看護師,介護者の責任ではなく,老衰でできるもの(一部,脊髄損傷などは除く)。
褥瘡ができたら褥瘡のラップ治療を取り入れる。
患者さんの全身状態が良ければ治るが,全身状態によっては治らないことがある。
治らなくても褥瘡と共存していけばいい。
このように高齢化医療とは?の角度から褥瘡治療を見直しその概念が変わっていくと,介護する方,される方の
双方の負担が軽くなります。
今こそ,様々な医学の領域でも高齢化医療についての本質的な議論をすべきだと思います。

2020-02-14 : その他 : コメント : 0 :

「アトピー性皮膚炎にムヒソフトgxもいいです」という投稿について

先日,夏井睦先生のサイトアトピー性皮膚炎にムヒソフトgxもいいですにの投稿がありました。

「なついキズとやけどのクリニック」では,アトピーのような皮膚炎の症状のある患者さんに対して
ボディーソープは使用せずに身体はお湯で洗うだけにして(臭いが気になる部分だけ石鹸で洗う),その後ワセリンで保湿をする。
それでもどうしても痒みがある部分だけ痒みが無くなるまでステロイド軟膏を使用する治療を行っています。

実際の診療では子供や軽い皮膚炎の段階にある患者さんでしたら上記の治療で改善する方がほとんどですが,
重症のアトピーの症状があり長期間にわたりステロイド軟膏やクリーム基材の軟膏を使用して皮膚に強い刺激を
受けている患者さんに関しては,ワセリン+ステロイド軟膏ではアトピーの症状が良くならないことがあります。

ヤケドに例えると,いったん瘢痕上皮になってしまうとステロイドの治療で盛り上がりはおさえることはできても,
ヤケドをする前のもとの正常な皮膚に置き換わることはありません。可逆的変化と不可逆的な変化の違いです。

重度のアトピーで悩まれている方には申し訳ないのですが,正常な皮膚のバリア機能が破戒されて後戻りできない
状態の時は,自身の肌の状況に合う軟膏を使用するしか手がないように思います。

2020-02-05 : その他 : コメント : 0 :

医師と患者さんの関係


なついキズとやけどのクリニックでは,できるだけ患者さんやご両親が診察しやすい雰囲気作りをしています。

一般的な病院では医師の方針に患者さんが従う構図ですが,当クリニックでは
患者さんとはフラットの関係に近いといった方がわかりやすいかもしれません。

患者さんがクリニックに入って来た時に手が空いていたら,できるだけ先生と私は顔を出すようにしています。

お子さんの場合は,お母さんが問診票を書いている時に一緒にプレイルームで遊び友達関係になります。
そしていざ診療が始まると,あえて診療前に子供と一緒に遊ぶ時間を作っています。
子供に合うおもちゃを探ることから始まるので,診療前に少し時間はかかりますが,お子さんとご両親の緊張も解れて
その後の治療にも協力してくれるので,お互いの信頼関係を築くために必要な時間であると思っています。

成人の方ですと,一通り先生からの治療や説明が終わった後に,気軽に問い合わせしやすいようにひと声かけるようにしたり,
説明が不十分かなと感じる方は更に説明の時間を設けています。
事務の方々も同じ思いでいて下さり,何かあればすぐに声を掛けてくれます。
正しく,陰の立役者です。

当クリニックを受診して下さった患者さんには治療に対して不安な気持ちになってほしくないという思いがあります。
そのために私ができることは何でもさせていただこうといつも決めています。

仕事は楽をしようと思えばいくらでも手が抜けます。
でも,私は患者さんに対しては効率は求めたくない。
できるだけ患者さんが安心して治療に臨めるように「患者さんの為にこちらが労力を惜しまない」ことを判断の主軸におきながら,
これからもお互いがフラットな関係で本音が言えるクリニックの環境作りを看護師の立場で考えていきたいと思っています。

※しばらく更新が空いてしまいすみませんでした。
湿潤治療自体がとてもシンプルである程度完結してる治療のため,同じような更新内容で申し訳ない気持ちになり
少し更新が空いてしまいましたが,患者さんの声を広い上げる思いでまた続けていこうと思います。
また,暇な時に覗いていただけると嬉しいです。
2020-02-03 : その他 : コメント : 0 :
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プロフィール

moisttherapy

Author:moisttherapy
湿潤治療に魅了されて数十年。
病院に来た患者さんや家族を笑顔にしてお帰したい,そんな思いで今も治療にあたっています。日々,患者さんに教えていただくことを綴っていきたいと思います。

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